2009年8月9日日曜日
0 コメント

コオロギは考える―記憶を読み出すしくみを解明【北海道大学】

14:59
研究成果のポイント

・異なる2種類のニューロンの活性化が,コオロギの「報酬や罰」の記憶の読み出しに必要なことを発見
・昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出すしくみに類似性があることを提示
・ヒトの記憶のしくみ解明に期待

研究成果の概要

異なる2種類のニューロンの活性化が,コオロギの報酬や罰の記憶の読み出しに必要なことが,東北大学(現在 北海道大学大学院先端生命科学研究院)の水波誠教授のグループの研究により判明しました。

これらはオクトパミンおよびドーパミンを伝達物質とし,報酬および罰の情報を伝えるニューロンです。
今回の発見は,昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出す仕組みに類似性があることを示しています。昆虫では,学習した刺激を受けると,脳の中でその刺激と結びつけて覚えた報酬や罰の情報を伝えるニューロンが活性化されますが,これは私達ヒトでは,学習した刺激を受けると,報酬や罰を“頭に思い浮かべる”ことに似ています。

今後,昆虫の記憶のしくみを更に調べることで,ヒトの記憶のしくみの解明に結びつくことが期待されます。

論文発表の概要

研究論文名:Roles of octopaminergic and dopaminergic neurons in appetitive and aversive memory recall in an
insect(報酬および罰記憶の読み出しにおけるオクトパミンおよびドーパミンニューロンの役割)

著者:氏名(所属)Makoto Mizunami, Sae Unoki, Yasuhiro Mori, Daisuke Hirashima, Ai Hatano, YukihisaMatsumoto, Tohoku University(水波誠,宇ノ木佐会,森康博,平島大介,羽田野愛,松本幸久,東北大学)

※水波誠教授(研究代表者)の現在の所属が北海道大学なため,北海道大学からのリリースとなります。
公表雑誌:BMC Biology(BMC バイオロジー)http://www.biomedcentral.com/bmcbiol/
公表日:日本 平成21 年8月5日(水)(アメリカ現地 平成21 年8月4日(火))

研究成果の概要

背景
水波誠教授らは,昆虫の脳(微小脳)が,私たちヒトを含む哺乳類の巨大な脳とどのように異なり,
どのような共通点を持つのかを明らかにすることを通して,動物の脳の進化について新たな洞察を得
ることを目標に研究を行ってきました。
特に,昆虫がもつ高度な臭覚や視覚の学習能力に着目し,そのメカニズムを分子・細胞レベルで調
べるこれまでの研究で,コオロギの学習においてオクトパミンおよびドーパミンを伝達物質とするニ
ューロンが報酬および罰の情報を伝えることを明らかにしてきました。

研究手法
本研究では,コオロギに学習訓練をおこなった後に,オクトパミンおよびドーパミンによるシナプ
ス伝達の阻害剤を血中投与し,記憶の読み出しに影響があるかを調べました。

研究成果
オクトパミンによるシナプス伝達を阻害すると,報酬の記憶の読み出しが阻害されました。罰の記
憶の読み出しは正常でした。反対に,ドーパミンによるシナプス伝達を阻害すると,罰の記憶の読み
出しだけが阻害され,報酬の記憶の読み出しは正常でした。
この発見により,昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出すしくみに類似性があることが分
かりました。昆虫では,学習した刺激を受けると,脳の中でその刺激と結びつけて覚えた報酬や罰の
情報を伝えるニューロンが活性化されます。これは私達ヒトでは,報酬や罰と結びつけて覚えた刺激
を受けると,“報酬や罰を頭に思い浮かべる”ことに似ています。

今後への期待
この研究成果は,昆虫の記憶のしくみが,従来考えられていたよりも高度であることを示していま
す。今後,昆虫の記憶のしくみを更に調べることで,ヒトの記憶のしくみの理解につながる成果が期
待されます。

0 コメント:

コメントを投稿

 
Toggle Footer
Top