2009年8月22日土曜日
スピン1個を超高精度で検出し、化学分析に用いることに成功 (室温での単一スピン読み取り書き込みに前進)【東北大学】
単一スピンは磁性材料の基本構成単位であり、いわば最小の磁石と考えられます。情報処理に欠かせない磁気記憶媒体などが技術の進歩に伴って縮小化していくなかで、単一スピンに注目が集まっていますが、それを精度良く検出する方法は見つかっていませんでした。ESR は化学分析手法として一般的に用いられ、ラジカル分子などの構造や電子状態の観察に用いられています。しかし、検出感度が弱くスピンを検出するには10億個以上の分子が測定試料として必要であり、単一のスピンだけを原子レベルで検出して化学分析を行うことはこれまでできませんでした。
本研究グループは、装置の改良によって測定試料と探針の間に流れるトンネル電流注3)に含まれる高周波信号注4)成分を高精度で検出できるようにした上で、原子レベルで測定された表面の特定箇所でのスピン信号を検知することに成功しました。これによって、初めて単一スピンの原子レベルでの位置決定と、そのスピンの周波数の測定を同時に行うことができ、化学環境の違いを単一スピンの周波数から分析できました。また本手法は、固体素子との相性もよいと考えることから、トンネル接合を持った固体素子に組み込まれてスピン検知の手法としても用いられる可能性があります。
本研究成果は、米国学術誌「Applied Physics Letters」に受理され、オンライン版で近日中に公開されます。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域:「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」
(研究総括:田中 通義 東北大学 名誉教授)
研究課題名:低次元ナノマテリアルと単一分子の振動分光・ESR 検出装置開発
研究代表者:米田 忠弘(東北大学多元物質科学研究所 教授)
研究期間:平成16年10月~平成22年3月
JSTはこの領域で、物質や材料に関する科学技術の発展の原動力である新原理の探索、新現象の発見と解明に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指しています。上記研究課題では、走査トンネル顕微鏡を主な手法とし、トンネル電流を用いた単一スピンの検出方法の確立を目指しています。
JAXAと連携協力協定を締結【九州大学】
国立大学法人九州大学(福岡県福岡市、総長 有川節夫)と独立行政法人宇宙航空研究開発機構(東京都調布市、理事長 立川敬二)は、平成21年8月20日、研究開発、教育・人材などに係る相互協力が可能なすべての分野において連携・協力を効果的に実施することを目的として連携協力協定を締結しました。
九州大学と宇宙航空研究開発機構は、これまで多くの研究協力を実施し成果をあげてきました。連携協力協定を締結することによって従来から行われている連携協力を円滑に進めるとともに、連携協力の体制を強化し、双方が協力して宇宙航空プロジェクトおよび将来計画に対応した研究を立ち上げる予定です。
具体的には、「宇宙理学」、「宇宙工学」、「航空技術」の3分野において連携協力研究テーマを設定し、共同研究の実施、連携大学院講座による研究と教育、双方の設備を利用した研究、インターンシップ制度による人材育成等により連携協力の推進を計画しています。また、この3 分野に限らず宇宙医学など他の分野にも連携を広げていくこととしています。さらに、連携協力事業の円滑かつ積極的な推進を図るため、両機関の代表者等で構成する連絡協議会を設置し、連携協力の調整を行います。
問い合わせ先
九州大学 総務部総務課広報室
〒812-8581 福岡県福岡市東区箱崎6- 10 -1
Tel. 092-642-2106 Fax. 092-642-2113
宇宙航空研究開発機構 広報部
〒100-8260 東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビルディング
Tel. 050-3362-4374 Fax. 03-6266-6911
鎌田迪貞氏,重渕雅敏氏に感謝状を贈呈【九州大学】
鎌田氏におかれましては,経営協議会委員や百周年記念事業推進会会長など,重渕氏におかれましては,経営協議会委員や財団法人九州大学後援会理事長などをお務めいただき、本学の学術振興にご尽力いただいたものです。
鎌田氏には7月23日に,重渕氏には7月10日に,それぞれ有川総長から感謝状を贈呈いたしました。
円周率の計算けた数で世界記録を樹立 【筑波大学】
これまでの記録は,東京大学情報基盤センター及び(株)日立製作所のグループが,2002年に達成した1兆2411 億けたで,今回の記録はそれを約2倍更新しました。なお,今回の世界記録は,スーパーコンピュータの性能・信頼性等の評価のための高性能計算の一例として 実施した結果,得られたものです。
円周率は無理数として知られており,紀元前3世紀にアルキメデスが円周率の値を「3.14」と計算して以来,円周率の値をより正確に求める努力が続けられてきました。
今回の計算では超並列型スーパーコンピュータ「T2K筑波システム」のうち640台を用い,さらにプログラムの効率化によって,計算けた数は約2倍の2兆 5769億8037万けたに増えているにもかかわらず,計算時間は73時間36分(検証計算時間を含む。)と,これまでの1/8以下に短縮することに成功 しました。
2兆5769億8037万けたの円周率が正しく計算されたことは,二つの異なる公式を用いて計算した結果を比較し,一致していること により確認しました。また,今回の計算においては一度もシステムに不具合が発生しなかったことから,「T2K筑波システム」の高い信頼性を検証することも できました。

T2K筑波システム
山田教授研究グループが国内初の異種膵島移植に成功【鹿児島大学】
~糖尿病サルへの異種ブタ膵島移植による2か月間の正常血糖の維持達成~
鹿児島大学フロンティアサイエンス研究推進センターの山田和彦教授(臓器置換・異種移植外科学分野)の研究グループは、自己膵臓全摘出によりインシュリ ン依存性の糖尿病を誘発した高血糖糖尿病のカニクイザルにブタ異種膵島移植手術を行い、術後58日間正常血糖値を維持することに国内で初めて成功しまし た。
今回の山田研究室の成果は、10月にイタリア・ベニスで開催される国際膵臓・膵島移植&異種移植合同総会(Joint Meeting IPITA-IXA 2009)で山田教授が発表する予定です。
Blockカリフォルニア大学LA校学長が鷲田総長を表敬訪問【大阪大学】
平成21年度オープンキャンパス(大学説明会)が開催されました【埼玉大学】
説明会は、学長の挨拶の後、学部説明会では、各学部・学科等の説明、入学者選抜方法の説明、模擬講義、在学生との懇談、研究室・実験室等の見学など、各学部とも趣向を凝らした、興味深い企画を実施しました。
別会場で行いました個別相談会・過去問題閲覧コーナー・大学のプロモーションビデオの上映にも多くの参加者がありました。中でも埼玉大学生が学内の施設を案内しながら参加者から学生生活の質問などに答えるキャンパスツアーは、埼玉大学の雰囲気が分かりやすく伝わり、埼玉大学生から受験の体験談・キャンパスライフも聴くことができて大盛況でした。
8月最後の日曜日、8月30日は、8月第1回目の説明会に参加できなかった方を対象に全学部で開催いたします(教育学部以外は午前のみの開催)ので、たくさんのご参加をお待ちしております。
開催日/学部/参加者数
8月1日(土)/教養学部/1,221名
8月2日(日)/経済学部/1,462名
8月8日(土) /教育学部/1,595名
8月9日(日) /教育学部 /2,118名
8月10日(月) /理学部/1,112名
8月11日(火)/工学部 /796名
8月12日(水) /工学部/1,326名
合計 9,630名
平成21年度後期社会人聴講生を募集します【静岡県立大学】
出願受付期間
2009年9月1日(火)~2009年9月14日(月)まで(土・日を除く。)
8時30分~17時00分まで
出願は、持参または郵送してください。
郵送の場合は、当日消印まで有効です。
出願資格
(1)聴講する科目に応じ、次の資格・要件を満たしている者
学部開設科目 高等学校を卒業した者
またはこれと同等以上の学力があると認められた者
大学院開設科目 大学を卒業した者
またはこれと同等以上の学力があると認められた者
(2)外国人の場合は、上記のほか、聴講期間を満たす在留資格を有していることが必要です。
開講期間
2009年10月1日(木)~2010年2月2日(火)
受入予定人数
各科目若干名(授業科目により異なります。)
2009年8月9日日曜日
内田翔選手が世界水泳200m自由型で4位入賞、日本新記録を更新しました【法政大学】
ローマで開催されている「世界水泳ローマ2009(第13回FINA世界水泳選手権大会)」で、内田翔選手(人間環境学部4年生)が、200m自由型で4位に入賞しました。
内田選手は予選、準決勝、そして決勝とすべて日本新記録をマーク。素晴らしい泳ぎで4位入賞を決めました。
内田選手の持ち味は後半の伸びと言われています。今回も決勝スタート時8位から大きく追い上げ、4位入賞となりました。
また、男子4×200mリレーにも出場した内田選手。こちらも決勝で7分2秒26の日本新記録を出し、見事4位入賞となりました。
ロンドンオリンピックを視野に入れ、大きく羽ばたこうとしている内田選手。今後とも応援よろしくお願いいたします。
【男子200m自由型】
内田翔 決勝4位 1:45.24(日本新)
【男子4×200mリレー】
内田翔・奥村幸大・日原将吾・松田丈志 7:02.26(日本新)
以下は卒業生の活躍です。
【男子100m平泳ぎ】
末永雄太(2008年3月卒業) 準決勝15位 59.98 決勝進出ならず
【男子200m平泳ぎ】
末永雄太 準決勝14位 2:09.70 決勝進出ならず
【男子200m背泳ぎ】
中野高(2007年3月卒業 法政大職員) 準決勝12位 1:57.02 決勝進出ならず
水泳部・秋山里奈選手(法3)が100m背泳ぎで優勝、世界新記録を更新しました【明治大学】
秋山選手は2年前の同大会で1分21秒23の世界新記録をマークし、今大会では積極的な泳ぎをみせ、自らが持つ世界記録を上回る1分20秒76の新記録で優勝しました。
~アンコール遺跡 修復事業の今を伝える~ 「バイヨン・インフォメーション・センター」開設について【早稲田大学】
カンボジア・アンコール遺跡救済活動を行ってきた理工学術院・中川武教授=日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)団長=の研究グループ は、アンコール遺跡の歴史や寺院、現在の行われている修復・研究事業を、写真を中心としたパネルや実際に出土した遺物等と共に紹介する現地施設「バイヨ ン・インフォメーション・センター」を8月6日、開設しました。観光客が気軽にアンコール遺跡の最新の研究成果に触れていただくだけでなく、カンボジアの 若い世代のための教育プログラムを作り、歴史や遺跡修復に関する情報の集積・発信基地として活用していく予定です。このセンターは、アンコール遺跡の歴史や寺院と、現在の国際的な数々の修復・研究事業を紹介する『アンコール遺跡群のインタープリテーション 施設』を意図して作られました。センター内では、写真を中心とした展示パネルや実際に出土した遺物など通して、現在行われているアンコール地域での修復・ 保全活動や、修復の工程について紹介しています。
さらに、JSAが事業開始当初より研究の対象としてきた古代都市アンコール・トムとその中心にあるバイヨン寺院、そしてその建造王ジャヤバル マン7世にスポットを当て、アンコール遺跡群が建造された当時の社会背景やその寺院に込められた意味に迫ります。また、修復活動の様子をまとめたドキュメ ンタリーやバイヨン寺院の謎に迫る映像も用意されており、専属のスタッフが館内を詳しくご案内します。日本からの多くの方のご来館をお待ちしています。
慶應義塾大学医学部小児科研究グループ 新生児の100人に一人に発生している先天性心疾患を引き起こす新たな原因遺伝子を世界で初めて発見【慶応義塾大学】
1. 研究の背景と目的
先天性心疾患は新生児の約1%に発生する最も頻度の高い先天異常の一つであり、内科的および手
術治療による成績が改善されてきた今日でも、新生児・乳児死亡の主要な原因です。総動脈幹症は、
本来大動脈と肺動脈の2本に分かれてそれぞれ体と肺に血液を送るべき心臓からの流出血管が、2本
に分かれず、1本の総動脈幹として存在する先天性心疾患です(別紙:図参照)。胎児は肺呼吸をし
ていませんが、出生後は、右心房・右心室から肺動脈を経由して肺に血液を送るのと同時に、肺から
戻ってきた酸素を多く含んだ血液を左心房・左心室から大動脈を経由して全身に送ることになります。
総動脈幹症では、右心室から送りだされる血液と左心室から送りだされる血液がともに総動脈幹に送
られるため、肺に過剰な血液が流れるのと同時に全身に十分な酸素が送られなくなります。これによ
り、生後早期に重篤な心不全、低酸素血症を発症し、救命困難な例、予後不良な例があります。再生
医療を視野に入れた治療成績と予後の改善には、分子・細胞レベルでの原因・疾患発症機序の解明が必須ですが、先天性心疾患の約9割は未だ原因不明で、一部の染色体異常症を除いて総動脈幹症を発症する単一の原因遺伝子はこれまで明らかにされていませんでした。
そこで、研究グループは、過去の動物実験から得られた情報をもとに、心臓発生および先天性心疾
患発症に関与する候補遺伝子を新たに推定し、ヒト先天性心疾患症例のDNA を対象として網羅的な
遺伝子変異解析を行うことにより、先天性心疾患の原因となる新規疾患原因遺伝子の特定を試みまし
た。
2. 研究の成果と意義
網羅的な遺伝子変異解析により、複数の総動脈幹症の症例で転写因子GATA6 をコードする遺伝子
に変異が検出されました。GATA6 遺伝子は、マウスを用いた動物実験により心臓発生の過程で発現・
機能することが示され、また、GATA6 遺伝子変異マウスで総動脈幹症類似の先天性心疾患が発症す
ることも報告されており、今回の研究結果に一致しています。
今回、ヒトの症例に検出された遺伝子変異を導入したGATA6 変異タンパクを作製し、その機能を
解析しました。その結果、GATA6 変異タンパクでは、神経および血管発生に重要な役割を果たす神
経血管誘導分泌因子※3 の一つである、セマフォリン3C※4 およびその受容体であるプレキシンA2
※5に対する転写活性能が、GATA6 正常タンパクに比して著しく低下していることが判明しました。ま
たトランスジェニックマウスを用いた実験で、セマフォリン3C およびプレキシンA2 が生体内で
GATA 転写因子群により直接的に発現制御されることを明らかにしました。特に、心臓発生過程にお
いて大動脈と肺動脈を2つに分けるための中隔(壁)を形成する心臓幹細胞である、心臓神経堤細胞
に関与するセマフォリン3C およびプレキシンA2 の発現が、GATA 転写因子群により直接制御され
ることがわかり、GATA6 遺伝子の変異によりセマフォリン3C およびプレキシンA2 の発現低下を来
たし、心臓神経堤細胞の発生が障害されることにより総動脈幹症が発症する、分子・細胞機序が解明
されました。
従来法では、ほとんど原因を明らかにすることができなかった先天性心疾患の一部の原因が、新た
な発想の網羅的遺伝子変異解析と変異タンパクの機能解析の統合により解明されたことは、この領域
の今後の進展に意義を持ちます。また、予後不良な重症先天性心疾患である総動脈幹症の単一原因遺伝子、およびその遺伝子異常によって疾患が発症するメカニズムが分子・細胞レベルで明らかにされ
たことは、本疾患の再生医療を視野に入れた新たな治療戦略の開発の基礎となる意義があります。
3. 今後の展開
本研究成果を「米国科学アカデミー紀要」に投稿後、さらに対象数を増やしてGATA6 遺伝子変異
解析をおこなった結果、総動脈幹症以外の先天性心疾患にも遺伝子変異検出例が認められております。
また、海外からもGATA6 の遺伝子変異が発見されたというプレリミナリーな報告(未発表データ)
もあります。今後、これらの新たな変異タンパクの機能解析を進めていくことにより、先天性心疾患
の原因遺伝子としてのGATA6 のインパクトが高まり、さらに詳細な疾患発症分子機構が解明される
ことが期待されます。
総動脈幹症などの心臓流出路の発生異常を伴う先天性心疾患では、生後早期から重篤な症状を呈し、複雑な形態異常のため治療困難な予後不良例も多いのが現状です。体格の小さな新生児・乳児に対し、サイズの大きい人工物を用いた心臓流出路の修復手術の適応には限界があり、また、術後遠隔期には人工物の変性が生じることにより血行動態が悪化し、予後不良の原因となります。術後遠隔期の合併症・遺残症を予防し、長期予後を改善するための理想的な治療法として、自己組織から誘導した幹細胞により心臓流出路を再建する再生医療が考えられます。しかし、小児領域では成人領域に比して、再生医療の研究および臨床応用が大きく立ち遅れています。本研究の成果である、分子・細胞レベルでの心臓発生および先天性心疾患発症機構の解明は、根治困難な先天性心疾患に対して、今後再生医療を実現するために必要不可欠な基礎的知見となります。
4. 掲載論文
タイトル:
GATA6 mutations cause human cardiac outflow tract defects by disrupting semaphorin-plexin
signaling
著者:
Kazuki Kodo, Tsutomu Nishizawa, Michiko Furutani, Shoichi Arai, Eiji Yamamura, Kunitaka
Joo, Takao Takahashi, Rumiko Matsuoka, Hiroyuki Yamagishi
雑誌:
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
(米国科学アカデミー紀要)
【用語の解説】
※1 転写因子GATA6:
転写因子とは、ゲノムDNA 上の遺伝子の制御領域に結合するタンパクで、その遺伝子の転写産物
であるメッセンジャーRNA の転写を促進ないし抑制することにより、メッセンジャーRNA から翻
訳されてできるタンパクの発現を調節し、生体内の様々な機能を制御する分子です。GATA6 は、
亜鉛分子を取り囲む突起(Zn フィンガー)構造を有し、DNA 上のGATA 結合配列に特異的に結合
して転写活性能を発揮するGATA 転写因子群(GATA1~6)に属するタンパクです。これまでの
国内外の研究により、GATA 転写因子群に属するタンパクは、血球、血管、心臓、消化管等、様々
な臓器・組織の発生に重要な役割を果たすことが報告されています。
※2 先天性心疾患:
心臓大血管の発生異常に起因する構造の異常により、血液循環の異常を来し、心不全や低酸素血症
を起こす疾患です。新生児100 人に対して約1 人の割合で発症する、生命に直結する先天異常の中
では最も頻度の高い疾患です。様々な種類の疾患がありますが、体で酸素を使われて酸素含量の少
なくなった血液が右心房—右心室—肺動脈と流れて肺に至る右心系と、肺で酸素を多く取り込んだ
血液が左心房—左心室—大動脈と流れて体に酸素を供給する左心系を、きちんと2つに分割するた
めに必要な隔壁(それぞれ心房中隔、心室中隔、大動脈・肺動脈中隔)の形成異常のバリエーショ
ンによって様々なタイプの構造異常が起こり、各々の疾患名で呼ばれます。本研究の対象となった
総動脈幹症は、上記、大動脈・肺動脈中隔および心室中隔の形成不全によって、右心系と左心系の
血液が2つに分離されず、心臓内で混ざってしまうことによって症状を起こします。
※3 神経血管誘導分泌因子:
発生には、ある細胞が別の細胞に対して働きかけること、すなわち細胞間の相互作用が必要で、心
臓血管の発生も例外ではありません。この働きかけ・相互作用の多くは、シグナル伝達によって担
われます。これは、ある細胞から分泌された分子(リガンド:ligand)が、細胞外シグナルとして
別の細胞表面に存在する特異的な受容体(receptor)タンパクに結合し、細胞内に生体シグナルを
伝達することによって起こります。神経系・血管系の誘導、発生には様々なリガンドが神経血管誘
導分泌因子として関与しており、セマフォリン3C(リガンド)もその一つと考えられています。
※4 セマフォリン3C(semaphorin3C):
セマフォリン分子はセマ・ドメインと呼ばれる構造を有するシグナル伝達分子として機能するタン
パクで、8つのサブクラス(セマフォリン1~7およびV)があります。セマフォリン3C は8つ
のサブクラスのうち可溶性タンパクとして群を成すセマフォリン3群に属します。セマフォリン3
群は、神経系において、細胞表面に膜貫通型タンパクとして発現する受容体であるプレキシンに結
合することにより、神経軸索の伸長を抑制ないし促進するシグナル伝達分子として機能します。最
近では、神経系以外にも免疫系、血管系において、セマフォリンープレキシン受容体シグナルが、
その発生およびネットワーク形成に重要な役割を果たすことが報告されています。
※5 プレキシンA2(plexinA2):
プレキシン分子は細胞表面に膜貫通型タンパクとして存在し、セマフォリン分子の受容体として機
能します。すなわち、細胞外に存在するセマフォリン分子がプレキシン分子に結合することにより、
細胞内にシグナルが伝達され、神経系においては神経軸策の伸長ないし促進、免疫系においてはネ
ットワーク形成、血管系においては血管新生など、種々の生体反応が起こります。プレキシンA2
は、4群(プレキシンA~D)からなる分子群のうちプレキシンA 群に属します。
コオロギは考える―記憶を読み出すしくみを解明【北海道大学】
・異なる2種類のニューロンの活性化が,コオロギの「報酬や罰」の記憶の読み出しに必要なことを発見
・昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出すしくみに類似性があることを提示
・ヒトの記憶のしくみ解明に期待
研究成果の概要
異なる2種類のニューロンの活性化が,コオロギの報酬や罰の記憶の読み出しに必要なことが,東北大学(現在 北海道大学大学院先端生命科学研究院)の水波誠教授のグループの研究により判明しました。
これらはオクトパミンおよびドーパミンを伝達物質とし,報酬および罰の情報を伝えるニューロンです。
今回の発見は,昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出す仕組みに類似性があることを示しています。昆虫では,学習した刺激を受けると,脳の中でその刺激と結びつけて覚えた報酬や罰の情報を伝えるニューロンが活性化されますが,これは私達ヒトでは,学習した刺激を受けると,報酬や罰を“頭に思い浮かべる”ことに似ています。
今後,昆虫の記憶のしくみを更に調べることで,ヒトの記憶のしくみの解明に結びつくことが期待されます。
論文発表の概要
研究論文名:Roles of octopaminergic and dopaminergic neurons in appetitive and aversive memory recall in an
insect(報酬および罰記憶の読み出しにおけるオクトパミンおよびドーパミンニューロンの役割)
著者:氏名(所属)Makoto Mizunami, Sae Unoki, Yasuhiro Mori, Daisuke Hirashima, Ai Hatano, YukihisaMatsumoto, Tohoku University(水波誠,宇ノ木佐会,森康博,平島大介,羽田野愛,松本幸久,東北大学)
※水波誠教授(研究代表者)の現在の所属が北海道大学なため,北海道大学からのリリースとなります。
公表雑誌:BMC Biology(BMC バイオロジー)http://www.biomedcentral.com/bmcbiol/
公表日:日本 平成21 年8月5日(水)(アメリカ現地 平成21 年8月4日(火))
研究成果の概要
(背景)
水波誠教授らは,昆虫の脳(微小脳)が,私たちヒトを含む哺乳類の巨大な脳とどのように異なり,
どのような共通点を持つのかを明らかにすることを通して,動物の脳の進化について新たな洞察を得
ることを目標に研究を行ってきました。
特に,昆虫がもつ高度な臭覚や視覚の学習能力に着目し,そのメカニズムを分子・細胞レベルで調
べるこれまでの研究で,コオロギの学習においてオクトパミンおよびドーパミンを伝達物質とするニ
ューロンが報酬および罰の情報を伝えることを明らかにしてきました。
(研究手法)
本研究では,コオロギに学習訓練をおこなった後に,オクトパミンおよびドーパミンによるシナプ
ス伝達の阻害剤を血中投与し,記憶の読み出しに影響があるかを調べました。
(研究成果)
オクトパミンによるシナプス伝達を阻害すると,報酬の記憶の読み出しが阻害されました。罰の記
憶の読み出しは正常でした。反対に,ドーパミンによるシナプス伝達を阻害すると,罰の記憶の読み
出しだけが阻害され,報酬の記憶の読み出しは正常でした。
この発見により,昆虫とヒトなどの哺乳類の間で,記憶を読み出すしくみに類似性があることが分
かりました。昆虫では,学習した刺激を受けると,脳の中でその刺激と結びつけて覚えた報酬や罰の
情報を伝えるニューロンが活性化されます。これは私達ヒトでは,報酬や罰と結びつけて覚えた刺激
を受けると,“報酬や罰を頭に思い浮かべる”ことに似ています。
(今後への期待)
この研究成果は,昆虫の記憶のしくみが,従来考えられていたよりも高度であることを示していま
す。今後,昆虫の記憶のしくみを更に調べることで,ヒトの記憶のしくみの理解につながる成果が期
待されます。
好熱菌のリジン生合成におけるタンパク質によるアミノ基修飾の発見【東京大学】
富田武郎(東京大学生物生産工学研究センター助教)
斎木朝子(東京大学生物生産工学研究センター/大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻修士課程;現ヤマハ発動機)
河野英俊(日本原子力研究開発機構)
高ひかり(順天堂大学医学部助教)
峯木礼子(順天堂大学医学部助教)
藤村 務(順天堂大学医学部准教授)
西山千春(順天堂大学医学部准教授)
葛山智久(東京大学生物生産工学研究センター准教授)
西山 真(東京大学生物生産工学研究センター教授)
発表概要
好熱菌[注1]のアミノ酸のリジン生合成において、タンパク質によるアミノ基修飾という新規な 機構を発見した。同タンパク質は生合成の各ステップの反応を触媒する各酵素が効率よく認識するためのキャリア(足場)となって機能しており、これはアミノ 酸生合成における新たな概念を提示することとなった。本発見は新たなリジン醗酵生産系の構築につながるものと期待される。
発表内容
リジン生合成には、アスパラギン酸を初発物質としてジアミノピメリン酸を経由する経路と2−オキソグルタル酸を初発物質としてαアミノアジピン酸 (AAA)を経由する経路の2つが存在する。前者の経路は広く細菌や植物に分布しており、近年需要が非常に増えているリジンの醗酵生産ではCorynebacterium glutamicumという細菌が用いられている。高度好熱菌Thermus thermophilusは、細菌でありながらAAAを経由してリジンを生合成する。T. thermophilusの リジン生合成において、AAAからリジンへの変換は、AAAのアミノ基の修飾保護から始まると考えられるものの、どのような保護機構がはたらいているのか 分かっていなかった。東京大学生物生産工学研究センターの西山教授のグループは、順天堂大学医学部、(独)日本原子力研究開発機構との共同研究により、 54アミノ酸からなる低分子タンパク質がAAAのアミノ基を修飾保護すること、さらには同タンパク質が各生合成酵素が効率よく認識するためのキャリア(足 場)となって機能することを発見した。本成果は、タンパク質が付加するという新たなアミノ基の保護機構だけなく、キャリアタンパク質[注2]を介したアミ ノ酸生合成の存在を初めて提示したもので、基礎的に重要な意義を持つといえる。また、本発見によって明らかになった好熱菌のリジン生合成系を最適化するこ とにより、新たなリジン醗酵生産系を構築することが可能になるものと期待される。
発表雑誌
Nature Chemical Biology, Advanced online publication, 7月20日号,(10.1038/nchembio.198)
タイトル:Discovery of proteinaceous N-modification in lysine biosynthesis of Thermus thermophilus
著者:上記発表者と同一
世界初の加速器によるホウ素中性子捕捉療法の動物実験を開始しました。【京都大学】
しばらく、動物実験による生物効果の十分な確認や照射中性子の物理学的特性をより詳細に把握する実験研究を続けるとともに、さらに中性子強度の向上を図る予定です。その後、性能が所期の目標に到達した段階で、臨床試験研究を計画する予定です。
【用語説明】
・ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
BNCTはBoron Neutron Capture Therapyの略。ホウ素の安定同位体であるB-10(天然ホウ素中に約20%含まれる)の原子核はエネルギーの低い低速の中性子(熱中性子)をよく吸収し、直ちにヘリウム原子核(α粒子)とリチウム原子核に分裂する。これら原子核は飛ぶ距離が4~10ミクロンと極めて短く、細胞を破壊する能力が非常に大きい(X線の7~8倍)。一方、熱中性子自体の細胞破壊能力は小さい。従って、B-10を含む物質が癌細胞に選択的に集積し、そこに中性子が照射されるとその細胞は選択的に破壊される。これがBNCTの原理である。
・サイクロトロン
1930年、アメリカのカリフォルニア大学のローレンスとリヴィングストンとが創案した円形のイオン加速器である。粒子を円形運動させるための磁界を作る磁石と粒子を加速するための高周波電界を発生させる電極(もともとD型をしていたのでディー電極と呼称)により、うず巻型の軌道をとらせながら次第に加速する装置である。原子核反応の研究、放射性同位元素の製造、医療用(PET用アイソトープ生産、癌の放射線治療等)に用いられている。
2009年8月7日金曜日
岡部金治郎先生と分割陽極マグネトロンが 第2回電気技術顕彰「でんきの礎」に選定【東北大学】
このたび、岡部金治郎先生と分割陽極マグネトロンが、第2回「でんきの礎」として顕彰されることとなりました。(http://www2.iee.or.jp/ver2/honbu/30-foundation/index.php)つきましては、下記の通り、授与式を開催いたします。ご多忙中のところ誠に恐縮ですが、ご臨席賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
記
(授与式)
1.日 時:平成21年8月21日(金)16時00分から
2.場 所:東北大学電気通信研究所
仙台市青葉区片平2-1-12号館 2階 所長室
本件に関するお問い合わせ先
東北大学電気通信研究所
総務課長 022-217-5419
庶務係長 022-217-5420
E-mail:k-kida@bureau.tohoku.ac.jp

